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2016年07月

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「べつに肉感的である必要はないのよ」

 と彼女は言った。

「ただ生命力を感じられれば」

 彼女は首をふる。

「ううん、嘘。いやらしいくらいの記号的なものに惹かれちゃう。でも美くしいとは思わない」「骨は美くしいわ、なだからで」「でもそこに生命は感じないじゃない。ヴァニティ・オブ・ヴァニティーズよ」もの言いたげにするぼくを無視して、彼女は喃々(なんなん)とつづける。「頭で考えることと体が感じることは、違うわ」「あるいは理想と現実、ともいえる。いつだってそう。お菓子づくりも政治も、いっしょよ。そのせめぎあいよ」

 言い切って彼女は、もうずいぶんに冷めてしまった珈琲を一口、喫んで、

「でも、何うだっていいわね」「だって、好いことだモン。なんにしたってサ。揺さぶられるのはサ」

 ぼくはなぜか、“恋はいのちのエネルギィ”という言葉を思い出す。

 彼女は我が意を得たりというふうに、ウンウン頷く。

「でもね直ぐ新らしいのが必要になっちゃうンだ」「消費しちゃうから、……」「基本的にはネ」

 彼女はすっかり物倦じをしたようでいて、どこか名残りおしげに、つぶやく。意味もなく、カップのなかみをぐるぐると混ぜる。

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双子の弟が死んだから

その血と骨を

ネズの木の下にうめよう

マザーグースを歌おうか?

それとも ランボーでも朗読する?

黒く細い枝は とても長く伸びるでしょう

そして私の首に ゆるゆると巻きついて

どこへ逃げようとも ちぎれない

私はくるしみ だけど 痛いほどの

快楽に酔いながら 年を老る


(それが ともに生きるということ)

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雨が上がった 秘密の花園

散らしたすみれにくちづけを

岸辺でひとり 手まくらをして 恋を想う


”彼の好きな食べ物が知りたい”


ただやさしさだけ 夢見ているの

世界中 そうだったらいいの

君はおろかだと笑うかしら

でもいいの

それは君のいのちが

永遠につづくようにと

祈るのと同じこと


びんづめのレモン水に 落としたつけぶみ

オルゴールの針に 隠したこころ


もうすこしだけ読まないでいてね

あとすこしだけ気づかないでいてね


マホガニイのドアをノックするまで

あともうすこし 見えないままでいて



果実が熟してく匂いがする……

収獲の季節が ちかづいている


雨が上がった 秘密の花園

散らしたすみれにくちづけを

手まくらをして 恋を想う……

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